2023年8月29日、一橋大学グローバル・ガバナンス研究センター(GGR)は今村真央教授(山形大学人文社会科学部)を講師にお招きし、GGRブラウンバッグランチセミナー「人道援助の理論と実践 ―ミャンマーにおける連帯型支援の事例」を開催しました。
今村教授は、本セミナーで人道的抵抗を中心とした人道支援の在り方について解説しました。まず、教授は最近の人道支援の傾向として、現地の人々による草の根の人道支援活動が最も効果的な支援の在り方として注目を浴びていると説明しました。その際に、活動は中立的ではなく、悪政に対抗し、苦しむ人々を支援することを目的にしていることを指摘しました。また、支援の現地化が進むに伴い、人道支援活動の中核が現地の人々の自己決定権を尊重することに置かれると強調しました。更に、今村教授は従来の国際機関による人道支援が受益者の規模の側面では看過できない影響を持ちつつも、直接的な影響力が限られているとした上で、国境を越えた連帯ネットワークを形成して支援を行う越境型援助と現地で支援を主な活動内容とする国内型の相互補完が望ましいと論じました。一方、越境・連帯型人道支援のリスクと課題について、教授は①現地の支配勢力、すなわちミャンマーへの人道支援の場合は武装組織との協力が必要であること、②ドナー側の人道型抵抗組織と武装勢力組織に対する知識が不足しているため、適切な情報提供・共有が必要であることを挙げました。
質疑応答セッションでは、現地における地下のネットワークを通じた支援がよりインパクトを有する背景や、複数のミャンマー支援団体の本拠地たるタイを取り巻く諸情勢が今後の支援動向に与える影響などに関する質問が提起されました。今村教授は、本来の支援の在り方が現地中心であること、タイの長期的なサポーティブな態度の傾向をもって質問に回答しました。
【イベントレポート作成】
金 浚晤(法学部 学士課程)