民主主義・人権プログラム
【GGRブラウンバッグランチセミナー】欧州連合における移民流入に関する最近の動向
日にち2023年7月5日(水)
時間12:30-13:30
開催場所マーキュリータワー 3302室
イベント概要

2023年7月5日、グローバル・ガバナンス研究センター(GGR)は、イリス・ゴルドナー・ラング教授(ザグレブ大学法学部教授)を迎え、第18回GGRブラウンバッグランチセミナー「欧州連合における移民流入に関する最近の動向」を開催しました。本セミナーには一橋大学の学生と教員計14人が参加しました。

ゴルドナー・ラング教授は、欧州連合(EU)への移民流入に関する近年の動向を概観し、この問題における政治性を強調しました。教授はまず、移民が最初に到着した加盟国を庇護申請先とするダブリン規則に触れ、規則の前提には加盟国の人権遵守における平等性やEUの団結があったと説明しました。しかし、現実には各国の庇護制度のパフォーマンスや、EU全域で審査される申請件数にはばらつきがあり、その結果、特定の国の庇護制度の制度的欠陥や、庇護申請者の権利の侵害が生まれてしまったと指摘しました。また、大量のシリア難民の流入に際しては、ドイツの難民受け入れ方針の180度の転換や、EUとトルコの間で「取引」がみられたと指摘し、「取引」に対して欧州各国の裁判所がとった政治的な解釈について説明しました。教授はまた、新型コロナウイルスの感染拡大に係る国境封鎖と移動の自由を認めるシェンゲン協定の齟齬についても説明し、封鎖措置は「安全保障」を理由として正当化されたと述べました。加えて、国境管理に対する新技術の導入や「法的押し戻し(legal pushback)」についても触れました。最後に教授は、移民問題において人道主義と安全保障の相克やEUの団結の欠如がみられると指摘しました。

質疑応答セッションでは、裁判所による政策決定主体の決定基準やダブリン規則の形成経緯、移民・難民の道具化(instrumentalization)などに関する様々な質問が提起されました。ゴルドナー・ラング教授は、移民問題の政治性や規模、ダブリン規則の課題、シェンゲン国境規則の修正に関する現在進行中の議論からこれらの質問に応答しました。

 

【イベントレポート作成】

中島 崇裕(一橋大学法学部 学士課程)