2023年3月10日、グローバル・ガバナンス研究センター(GGR)は、ジェイフー=パク氏(オックスフォード大学政治・国際関係研究科博士後期課程;高麗大学アジア研究所ASEANセンター リサーチ・フェロー)をお迎えし、「日の名残り -権威主義体制下での経験が民主化後の政治的ノスタルジーに与える影響」と題したトークセッションを行いました。
パク氏はまず、自身の論文における「なぜ人々は過去の権威主義体制を支持する政治的ノスタルジーを抱くのだろうか」という問いかけからトークセッションを開始しました。その後、2017年の韓国大統領に対する弾劾事件を例に取り、権威主義体制下での経験が高年齢層と若年層の政治意識の違いを生む重要な要因になっているようであると論じました。次いで、パク氏は「権威主義体制下での経験は民主化後も人々の態度に影響を与えるのか」という2つ目の疑問に移りました。パク氏は先行研究において、民主化に関する既存の文献は相当量存在するものの、そのほとんどが民主化への移行や民主化のその後に関する説明に焦点を当てていることを指摘しました。権威主義の後継政党を分析するために、アルゼンチン、ブラジル、チリ、インドネシア、ペルー、韓国、スペイン、台湾、ウルグアイの9カ国を分析対象国としています。また、(1)権威主義体制下の要因、(2)移行期の要因、(3)民主化後の要因、という3つの時間軸を考慮して分析を行ったと説明しました。そして、世界銀行、世界価値観調査(World Value Survey)、V-demのデータセットを用いて5つの仮説を立てました。パク氏は結果の解釈として、権威主義体制下でより良い経済状況を経験した人々は、経済的正当性によって権威主義的な後継政党を支持する可能性が7.1%高くなることを明らかにしました。一方で、権威主義政権下でより多くの抑圧を受けた人々は、強い指導者を支持する可能性が低くなることも論じました。研究デザインについては、従属変数、独立変数、コントロール変数の構成について説明が加えられました。
質疑応答では、会場に参席した9名の教員、学生から、分析対象国の選定基準に関する質問が投げかけられました。この質問に対して、パク氏はコントロール変数を適用して適切な国を選定した旨を説明しました。参加者からは、アジア、東欧、ラテンアメリカの国々を比較する提案がなされました。
【イベントレポート作成】
ニン・テ・テ・アウン(国際・公共政策大学院 修士課程)
鈴木涼平(法学研究科 博士後期課程)