民主主義・人権プログラム
【GGRトークセッション】ミャンマーで今何が起きているか
日にち2022年4月28日
時間17:10-18:55
開催場所第1講義棟307番教室
イベント概要

2022年4月28日、グローバル・ガバナンス研究センター(GGR)は、法学研究科客員研究員のニン・テ・テ・アウン氏を招き、「ミャンマーで今、何が起きているか」というテーマで学部生との対話セッションを開催しました。

約50名の学生が参加し、終始多くの質問が出されました。学部4年の学生からは、「他の国を含め日本も、ミャンマーの現状にあまり関心がないようです」という意見が出されました。これに対してアウン氏は、「日本にいるミャンマー人コミュニティは、軍部に抵抗するミャンマー人の運動を支援し、日本や国際社会に対して声を上げています」と説明しました。

また、「内戦が終了し、民主化に向かうミャンマーはどのような外交的アプローチをとることが可能だと思いますか」という質問に対してアウン氏は、「軍事政権以降の状況を予測するのは難しいですが、連邦国家に移行する過程で、さまざまなグループ間での権力分割について議論がされると思います」と答えました。また、「多様なグループ間での公平性の達成方法」という質問に対しては、「公平性を実現するためには言語と教育の問題が重要です。すでに少数民族が大学で自分たちの言葉によるカリキュラムを持ち始めたことは、その実現に向けた動きの一例です。国家資源の配分も重要な課題です」と述べました。

多くの学生から、ミャンマーへの経済制裁の効果に関する質問が挙げられました。そのうち一人は、「マクロ的には効果的かもしれません。ただし、市民やビジネスセクターは大変苦労しています」と指摘しました。アウン氏は、「制裁はともかく、ミャンマー中央銀行が現金の供給を増やそうとしないため、現金不足がミャンマー国民にとって喫緊の課題の一つとなっています。例えば、買い物をするためにATMでお金をおろすことさえできないので、ネットで決済するしかありません。しかし、軍部に流れる資金は断たなければなりません」と答えました。

クーデター後の市民の日常生活にはどのような変化があったのでしょうか。アウン氏は、「軍部が電気を止めたので、エアコンなしで夏を過ごしました」と説明しました。「パソコンの充電もままなりません。クーデター発生後最初の1週間は、9時から11時までしかインターネットが使えませんでした。クーデター直後の3時間は、インターネットも電話も遮断されました。軍は市民の意志をくじくため、このようなことを行います。市民は子供たちを学校に行かせず、その代わりに国民統一政府(National Unity Government: NUG)や市民社会が提供するプログラムに参加させ、学生たちは連邦制や憲法、民主主義についてオンラインで学んでいます」と述べました。

ミャンマー軍部に対する抵抗運動は、ミャンマーの学生からどれほど支持を得られているのかという質問に対しては、アウン氏は、「ほとんどの学生は民主化を支持している一方で、88世代は現在、多くの危機に直面しています」と述べました。また、ロヒンギャ難民に関する質問に対しては、「ロヒンギャ難民も、状況が安定するまではミャンマーに戻ることは難しいです」と答えました。

メディアの役割に関する質問に対してアウン氏は、「メディアはミャンマー国民にとって多くのことを可能にしてくれます。ミャンマー国民の多くは今、軍部がしていることをビデオや写真で撮影し、国内外の人々に送ることで知らせる役割を担っています。市民ジャーナリストは、とても重要な役割を担っているのです」と説明しました。最後にアウン氏は、市民の基本的権利である選挙権が守られていないミャンマーの状況を残念に思い、一人でも多くの学生に投票するよう呼びかけました。そして本学の学生たちに、ミャンマーの人々と一緒に立ち上がり、ソーシャルメディアを通して激励の気持ちなどのメッセージを、ミャンマーの人々に広めるよう求めました。

 

【イベントレポート作成】
チョン・ミンヒ(一橋大学大学院法学研究科 博士後期課程)