国家元首の免除
出版日2021年
書誌名論究ジュリスト
著者名竹村仁美
要旨 今日、「共存の国際法」としての免除の国際法に対抗する概念として、国際共同体の共通利益である「国際法上の重大犯罪に対する不処罰の終焉」を実現する「協力の国際法」が生じつつある。だが現状では、「協力の国際法」と「共存の国際法」は共存し、主権国家中心の国際社会構造を維持する以上、依然、後者が中心的役割を担う。ゆえに、国家間の水平的法律関係の基盤を背景としているからこそ、個人や国家に対する国際法の垂直的法律関係の実現も難航する。協力の国際法が国家に対して正当で衡平なものと評価されない限り、それは国家にとって介入の国際法と映る。国際刑事裁判所と非締約国国家元首の免除の問題も、法的解決というよりは政変による時間的解決にとどまっているように思われる。主権に阻まれずに個人の刑事責任の追及を行うことで被害者の人権救済を行おうという協力の国際法の成否は、国際刑事裁判所が説得的にそれを展開できるかどうかにかかっている。