要旨
大規模な環境や生態系の破壊行為をエコサイドといい、このエコサイドを重大な国際法上の犯罪と位置づけるために国際刑事裁判所規程の改正を求める声が一部の国際法の専門家から上がっている。しかし、国際刑事裁判所規程の改正のハードルは高く、且つ規程改正後に諸国がその改正を受諾しなくてはならない仕組みとなっている。さらに、現時点でエコサイドは新しい概念であり、慣習国際法上の犯罪と確立しているとは言い難い。政治的にもエコサイドが国際刑事裁判所規程上の犯罪となることで、国際刑事裁判所に参加していない国々が、一層国際刑事裁判所に対する態度を硬化させる可能性もある。こうした難題に対処するには、人道に対する犯罪、戦争犯罪などの規程中の既存の犯罪行為にエコサイドが該当しないかどうか探る方法も考えられるかもしれない。